「目の奥の激しい痛みで夜も眠れない」「いつもの疲れ目とは違う鋭い痛みがする」など、眼に不安を感じている方は少なくありません。
スマホやパソコンの長時間使用が当たり前になった現代では、目の奥の痛みに悩む方が数多くいらっしゃいます。
軽度な眼精疲労から失明の危険がある急性緑内障発作まで、目の奥の痛みには緊急性の異なる様々な原因が存在。正しい知識がなければ、重大な病気のサインを見逃してしまう可能性があるでしょう。
本記事では、目の奥の痛みの原因を症状別に詳しく分析し、自宅でできる対処法から病院受診の判断基準まで具体的に解説します。
目の奥が痛い理由として考えられる6つの原因

目の奥の痛みは、日常生活で経験することが多い症状です。痛みは軽い疲労感から激しい痛みまで様々で、原因も多岐にわたります。
- 眼精疲労
- ドライアイ
- 異物混入
- 角膜炎
- 緑内障
- 麦粒腫
まずは、どのような原因で目の奥の痛みが生じるのかについて理解を深めましょう。
眼精疲労による目の痛み
眼精疲労は目を酷使することにより、眼痛をはじめとする目の症状や、全身症状が現れる状態を指します。
目の症状 | 目の奥の痛み 目の重さ かすみ目 充血 |
---|---|
全身症状 | 頭痛 肩こり 倦怠感 吐き気 |
通常の疲れ目と異なり、十分な休息や睡眠をとっても回復しないのが眼精疲労の特徴です。
眼精疲労の原因はパソコンやスマホの使いすぎが多い
パソコンやスマホの長時間使用は、眼精疲労の最も一般的な原因です。
近くを見る時には、目のピントを合わせる機能である毛様体筋が緊張状態になります。緊張した状態が長い時間続くと毛様体筋に大きな負担がかかってしまい、眼精疲労の症状が現れます。
ドライアイが引き起こす目の痛み
ドライアイは、涙の減少や成分の変化によって目の表面が乾きやすくなる病気です。パソコンやスマホの画面に集中すると瞬きの回数が減少して、涙の分泌量が減少します。
エアコンによる乾燥や夜型のライフスタイル、コンタクトレンズの使用もドライアイの発症に関係しています。
症状が悪化すると「目が痛い」「目を開けていられない」といった症状が現れ、生活の質を落とす要因となります。
異物混入による急性の痛み
目にゴミやまつ毛などの異物が入ると、目の表面の神経が刺激されてゴロゴロ、チクチクといった症状が起こることがあります。
異物が目に入った場合、まばたきを繰り返すうちに涙とともに流れ出る場合が多いですが、異物が上まぶたの裏側に入り込んでいる場合は取れにくくなります。
注意が必要なのは、勢いよく飛んできた異物が角膜(黒目の部分)に突き刺さってしまうことです。これを角膜異物といいますが、放置すると他の眼病の原因になる場合があるため早めに治療を受けることが大切です。
角膜炎・角膜上皮障害による痛み
角膜炎とは角膜に炎症が生じている状態のことで、目が痛い・充血するといった症状があります。角膜上皮障害は角膜の最も外側の層である角膜上皮に傷がつき、目の表面に強い痛みが生じる状態です。
原因として外傷、異物の飛入、乾燥(ドライアイ)、まぶたの異常(逆さまつ毛)などがあります。コンタクトレンズをつけたまま眠ることも角膜上皮障害の原因となるため、注意が必要です。
緑内障による目の奥の痛み
緑内障は眼圧の上昇により視神経が損傷し、視野が狭くなる疾患です。一般的な緑内障は徐々に進行するため、初期段階では自覚症状がほとんどありません。
しかし、急激に眼圧が上昇することで「急性緑内障発作」を発症することがあり、激しい頭痛や目の痛みを感じることがあります。
麦粒腫(ばくりゅうしゅ)・霰粒腫(さんりゅうしゅ)による痛み
麦粒腫はいわゆる「ものもらい」で、人の皮膚にもともといる常在菌が原因で起こる細菌感染です。抵抗力が低下している人は特にかかりやすく、まぶたの一部が赤く腫れ、痛みやかゆみを伴う場合があります。
霰粒腫は、まぶたの中にある脂腺(マイボーム腺)の出口が詰まることによってしこりができる疾患です。基本的に痛みはありませんが、しこりの部分に細菌感染を起こして腫れや痛みを起こすこともあります。
目の奥が痛い時の症状と危険なサイン

目の奥が痛い時に特に注意すべきは、単なる痛みだけでなく頭痛や吐き気・視力低下などの症状が同時に現れる場合です。
迅速な治療が必要な疾患が生じた場合、早期の適切な対応により、深刻な合併症を防ぐことができます。
目が痛む感覚の種類と痛みの程度
目の奥の痛みは、その性質によって様々な種類に分類されます。「目の奥が痛む」「目の中心が痛い」「こめかみあたりが痛む」「頭頂部まで痛みを感じる」など、痛みの訴え方は人それぞれです。
具体的な痛みの種類として、ピリピリ・ズキズキとした鋭い痛み、ズーンとした重い感覚、チクチクと刺すような痛み、目の奥がえぐられるような激痛などがあります。
迅速に病院を受診すべき危険な症状
目の奥の痛みに頭痛や吐き気を伴う場合は、重篤な疾患の可能性があるため特に慎重な対応が必要です。
急激な視力低下が起きたり、視野が欠けてきた場合にも速やかな受診が求められます。目の痛みが続いたり、一旦解消しても繰り返す場合には、失明につながる深刻な疾患が隠れている可能性があります。
片目だけの症状でも重篤な病気の可能性があるため、自己判断せず迅速に医療機関を受診するようにしましょう。
目の奥の痛みに関連するその他の病気
目の奥が痛む症状は、治療が必要なさまざまな病気のサインとなることがあります。特に注意が必要な疾患として、視神経の炎症を起こす視神経炎、鼻の空洞に膿が溜まる副鼻腔炎が挙げられます。
これらの病気は、それぞれ異なる原因と症状を持ちながらも、目の奥の痛みという共通点があるため、正確な診断と治療が重要となります。
視神経炎は片目の奥だけに痛みを引き起こすことも
視神経炎は、眼球の網膜で受け取った映像情報を脳に伝える視神経に炎症が起こる疾患です。特徴的な症状として、目の奥の深い痛みがあり、特に眼球を動かすときに痛みが強くなることが多いと報告されています。
視神経炎による痛みは片目または両目に出る事があり、比較的急激に進行する視力低下や視野障害と併せて現れます。
原因としては多発性硬化症、視神経脊髄炎などの自己免疫疾患の初発症状として出現することがありますが、原因不明の特発性視神経炎も存在します。
治療には主にステロイドパルス療法(ステロイドを大量に短期間点滴する治療)が用いられ、特発性のものは比較的予後が良好とされています。
副鼻腔炎が原因の目の痛みは下を向くと痛みがひどくなる
副鼻腔炎(蓄膿症)は、鼻の周囲にある空洞に炎症が起こり、膿が溜まる病気です。膿が溜まる位置によって、痛みを感じる部位が異なるという特徴があります。
特に篩骨洞(しこつどう)に膿が溜まった場合、目の奥に強い痛みが現れ、頭を下に向けると痛みが増強するのが典型的な症状です。
治療は抗生物質による内服治療が主体となり、重症例では外科的な膿の排出が必要となる場合もあります。
眼窩蜂窩織炎(がんかほうかしきえん)の症状
副鼻腔炎などからの感染が眼窩にまで広がることで、眼窩蜂窩織炎を発症することがあります。症状として、まぶたの赤み・腫れ、目の痛みや熱感が現れ、病状が進行すると眼球突出や眼球運動障害を起こします。
さらに重篤な場合は眼球内にも炎症が波及し、視力低下や視野障害が生じることもあります。感染が進行する前に、できるだけ早く抗菌薬を投与することで症状の悪化を防ぐことができます。
目の奥が痛い時に自宅で実践できる対処法

目の奥の痛みは、適切な対処法を知ることで症状の緩和や悪化の防止が期待できます。自宅ですぐにできる応急処置と、生活習慣を見直すためのアイデアをご紹介します。
目の痛みに対してすぐにできる応急処置
目の奥に痛みを感じた時の応急処置として、まず目を安静に保つことが重要です。スマホやパソコンの使用を中止し、十分な休息を取ることで、眼精疲労による痛みの軽減が期待できます。
人肌程度に温めたホットタオルを閉じた目の上に当てることで、血行が改善され目の疲れの解消に役立ちます。軽いマッサージも血行改善に効果的ですが、異物が入った可能性がある場合は絶対に行わないでください。
また、十分な睡眠を取ることも、目の疲労回復には欠かせません。
痛み緩和におすすめ!目薬の正しい使い方
目薬を正しく使用することで、目の奥の痛みの緩和が期待できます。使用前に必ず手をせっけんと流水でよく洗い、下まぶたを軽く下にひいて1滴を確実に点眼します。容器の先がまぶたやまつ毛、目に触れないよう注意しましょう。
点眼後はまばたきをせず、まぶたを閉じてしばらく(1〜5分)そのままの状態を保ちます。この際、涙嚢部(目頭のやや鼻より)を指先で軽く押さえることで、目薬が鼻の方へ流れていくのを防げます。
ツボを意識するのがコツ!目の周りのマッサージ方法
目の周りのマッサージは、血行を改善し疲れ目の解消に効果的です。以下の3つのツボを指の腹で5〜10秒間優しく押し、5秒間緩める動作を3回程度繰り返すことができます。
- 晴明(せいめい)
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目頭と鼻の付け根の間にあるくぼみ。左右から挟むようにして内側に押す
- 攅竹(さんちく)
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眉頭の内側で目の上の骨のくぼみ。両手の親指で眉下から上に押し上げるように押す
- 太陽
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こめかみの下の少しくぼんだ部分。気持ち良いと感じる程度の強さで、くるくると指を回しながらほぐす
マッサージする際は、眼球を押さないよう十分注意し、初めは弱めに押して徐々に力を加えることが大切です。
目を休ませることが大切!生活習慣の見直しポイント
目の奥の痛みを根本的に改善するには、日常生活の見直しが不可欠です。仕事でデジタル機器を長時間使用している方は、意識して目を休める習慣を身につけましょう。
厚生労働省の「情報機器作業における労働衛生管理のためのガイドライン」では、作業時間を1時間以内で1サイクルとし、サイクル間に10〜15分の作業休止を取ることが推奨されています。
パソコン使用時の作業環境を整える
パソコン作業における目の負担軽減には、適切な作業環境の整備が重要です。
- ディスプレイは目から40cm以上の距離を保ち、画面の上端は眼の高さまでに調整する
- 目を保護するためにディスプレイの輝度やコントラストを適切に調節する
- 椅子に深く正しく座り、足裏全体が床に接するような姿勢を保つ
- 長時間同じ姿勢にならないよう、時々立ち上がったり立ち作業を取り入れる
太陽光がディスプレイに差し込む場合は、窓にブラインドやカーテンを設置してグレア(まぶしさ)を防ぎ、室内の明暗の対照をなるべく少なくしましょう。
適切な休憩の取り方
休憩中は体操やストレッチなどの軽い運動を取り入れ、緊張した筋肉をほぐすことが効果的です。首や肩のストレッチのように座りながらでも手軽にできるメニューがおすすめで、作業していない時間を有効活用して血流を改善させることができます。
目のストレッチとして、意識的に遠くを見たり、まばたきの回数を増やしたりすることも。集中すると時間を忘れてしまう場合は、スマホのアラーム機能を使って定期的な休憩を促すのが良いでしょう。
目の奥が痛い症状のよくある質問
目の奥の痛みに関して、多くの方が抱える疑問があります。症状の特徴や原因について、適切な知識を持つことが早期対処につながるので、ぜひ参考にしてください。